古来から日本の在来種である栃の木をマロニエと呼ぶことを知ったのは2年ほど前である。マロニエから思い浮かぶのは、シャンゼリーゼ通りにマロニエの街路樹がつづきその岸辺に沿って散策をしていると「オ・シャンゼリーゼ」、「ラ・メール」、「バラ色の人生」………古いシャンソンなんか聴こえてきそうだ。
マロニエは、春6月の上旬に甘い香りを漂わす白い花が咲く。私は、7年前から養蜂をはじめている。蜜源植物のマロニエの花が咲くころ、ミツバチは花粉や花の蜜を求めて巣箱から半径3.5キロ内まで旅をする。花の香りや色、花の蜜の出る時刻などを記憶し、同じ種類の花だけを選んで効率よく蜜と花粉を集める。花は蜜のありかを目立つ模様で自己主張し、ミツバチによって花の受粉を確かなものにする。蜜を集めてきた働きバチは、花のある場所の方角と距離を尻ふりダンスで仲間に伝える。ミツバチは、唯一コミュニケーションできる社会性昆虫なのだ。満開に咲いた花の下には、豊富な花蜜が滴り落ちるマロニエ1本の木から私が年間採蜜量の約60キログラムのハチミツがとれるという。
さてこらから、私にとって今年の目標の一つである「栃もち」作りについて数回に分けて語ることにしょう。先人の伝統食が途絶えてしまい、周りの人に栃もちの作り方を教えてほしいと聞いても、今では顔の見える指南役は誰もいなかった。本やネットで調べたが、肝心な渋抜きの箇所は企業(?)秘密で詳細に記述していなかった。昨年の秋に拾ってある栃の実を2月2日に流水につけることから始め、17日には杵で栃もちを搗く予定である。雪が解けはじめる早春、縄文食文化として伝わる「栃もち」を先人の知恵をたぐり寄せながら学びたいと思う。そして、手探りのような栃もち作りになるが、最大もらさず公開しますので秘伝としてお役にたてたならうれしいです。