雪の中から掘り出した薪に
渾身の力で斧をふる
ぼくと同じ時間を刻んできた薪は
張りつめた鋼のような寒気の中で
カランと乾いた音を残して
二つに弾けた
ゆるゆるとながながと
冬の夜は横たわる夜の帳を払いながら
燃ゆるストーブの火に手をかざした
なめる炎
ゆらぐ炎
おどる炎
のぼる炎
ぼくの手はやわらぎをとり戻し
かたくなな意思は
花の蕾に染みていく
火を映す瞳は
五十万年前の記憶をよびさました
火を継ぐ者よ
雪つぶに叩きつけられ
雪の下へ抑えつけられても
やがて来る光る春に向かい
灰の中に埋み火を育んでおけ
2000年、我が家に冬の主役薪ストーブがはいった。その冬、薪不足のために雪の降るなかで薪割りをいつもしていた。炎の暖かさと春の兆しを夢見ながら‥‥‥‥。