カラオケ考

カラオケは進化し続けて今、私が思うに第三世代になっている。
第一世代はLPレコードと店主が手書きの歌詞カード。選曲といえばレコードの曲と曲の間の1.5ミリくらいの隙間に針を落とすという職人技が要った。レコードはたまに「跳んで」しまうことがあって、途中どの小節に跳んだとしても少しも動じない精神力と歌唱力が試された。
第二世代は8トラと、ようやく丸ゴジックの活字の歌詞カード。選曲は簡単になったがテープの劣化により伸びている小節が出て来る。が、平気に唄いきる実力が要った。
そんな頃よく仲間とスナックに行った。5人くらいで飲んでも唄うのは私ともう一人くらい。10人くらいの団体で行っても私ともう2人の3人くらい。他の人に勧めると「いやーおれはカラオケはどうも・・・」
「そうだろうな。オレぐらい上手に唄っちゃうと唄いづらいだろうな」と思ったものだ。

ところが第三世代のCDとモニターになった頃から生態に変化が出てきた。今まで唄わなかった人たちがドンドン唄いだしてきた。しかも困ったことにその大半の人たちが私なんかよりはるかに上手いのだ。
「なぜそんなに上手いのに唄わなかったのだろう? それじゃいったい全体私の唄をどう評価しながら聞いていたのだろう? それよりもこの人たちは何を考えて生きてきたのだろう?」
いろいろな疑問がわいてきた。うっかりこのまま調子に乗って唄っていると、いつか足下をすくわれてしまうかも知れないぞ。くわばらくわばら。もう少し慎重に生きよう・・・。
暫くは唄えない日々が続いた。

でも、ただチビチビ飲んでいるだけだったら家で飲んでても同じである。わざわざスナックに行ってそこで飲んで唄うことで不況のストレスを発散できるのだから、それならばおおいに唄おうと、いつの頃からか気を取り直して、それでも控えめに「ヘタですが、それでは一曲唄わせていただきます」と唄うようになった・・・
・・・・が、ちっとも気分転換にならない。
「オレはうまい。皆さんはよく聞いていなさい。」それくらいの気分で丁度いいのである。

謙虚さと自信に満ちた唄い方のバランスは結構難しい。