草餅を作る楽しみ

道ばたの野草が勢いよく伸び始め、緑の潤いを野に広げている。その中でもひときわ目を引くのがヨモギ。伝承薬草として、もぐさ、入浴剤、お茶などに日常的に使用されている人も多いと思う。この時期、4年前から柔らかい新芽を摘んで「つきかえし(ヨモギ餅)」を作ってきた。先日、是非教えてほしいという友人からのお声がかかり指南役を買ってでた。
農薬や除草剤などを散布していない山際まで出かけヨモギを摘み採ってきた。雨上がりの朝、濡れたヨモギは湿った空気にかすかな匂いを残した。友人の一人がヨモギには、♂ヨモギと♀ヨモギがあることを教えてくれた。♂ヨモギは葉の茎が薄紫色をしていて多少固いく、柔らかい♀ヨモギは草餅に適しているという。摘み採ったヨモギを沸騰した鍋に入れ15分ゆで、灰汁抜きとして重曹を一つまみ入れると鮮やかな緑色に変ってくる。
茹だったヨモギを笊にあけ、自然に冷ます。その間にうるち米粉ともち米粉を混ぜ生地を捏ねる。市販されている上新粉(うるち米粉)と白玉粉(もち米粉)で間に合わせても良い。耳たぶくらいの柔らかさになったら適当にちぎり、蒸し器に入れ約20分間強火で蒸す。蒸している時間にヨモギを包丁で細かく刻むのであるが、繊維が細く切れ味鋭い包丁を使ってもなかなかうまくいかない。友人は、包丁を叩くようにしながら刻んでくれた。調理場は、まな板を叩く音がリズミカルに響いた。次にヨモギをすり鉢に入れ、すりこ木でさらに細かくする。その中に蒸し上がった生地を開け、熱い内にヨモギと混ぜるようにしながらすりこ木で搗いていく。一人からすり鉢を抑えてもらいすりこ木を力強く上下に打ちながら搗いていくのであるが、非常に体力を要する行程である。しかし生地の白がしだいにヨモギの草餅へと変りゆくときには、喜びがわきあがってくる。
粒あんは、私が自家栽培・収穫した大納言の小豆で作ることになった。大納言は、小豆の中でも特定の品種群に属し、煮ても皮が腹切れしにくいことから、切腹の習慣がない公卿の官位である大納言と名付けられたとも言われている。大納言は大粒で種皮も厚いことから煮くずれしにくく、甘納豆や高級小倉あんの原料として用いられる。GW後は肌寒い日が続いたので、薪ストーブに火をつけじっくりと小豆を煮込みまろやかな粒あんに仕上げた。
適当な大きさに生地を丸く成型したら平べったくし、その上に粒あんをのせ包込むように二つ折りにして出来あがり。みんなで試食しながら春の香りと味覚を満喫したのは言うまでもない。

茹でたヨモギを刻む


すり鉢の中でヨモギと一緒に搗き終わったら粒あんを包み込み成形